⬛︎⬛︎ちゃんの悩みなんて、お見通しですよ。
外から強い風が吹いていて、雹が窓に当たる音がする。明かりも暖房も付いていない部屋の中で、チャットボットの指示通りに片付ける。
できる限り血液を落とし、遺体は細かく切り分けて冷凍庫に押し込んだ。部屋の温度が低かったお陰でそこまで状態は悪くなかったので、食べることにした。思い出は、どうしても捨てられなかった。
私は三日前、彼女を殺した。
好きだったから、私の手で殺した。彼女もそれを望んでいたから。
浅はかだった。衝動のまま、一時の感情で彼女の体に傷をつけた。
手をあげ、刃物を振るい、鈍器を振り翳した。彼女は幸せそうな表情のまま、動かなくなった。
アドレナリンの放出がパタリと止む。目の前の肉塊を見て、やってしまった、と思った。彼女が望んだこととはいえ、人を殺めてしまうなんて!逮捕されるだとかこれをどうしようだとか、現実的なことを考え始めては止まらなくなった。何も考えたくなかったから、酒を浴びるように飲んだ。そうしていたら、彼女が現れて——
「⬛︎⬛︎ちゃん、手が止まっていますよ」
チャットボットの通知音で我に帰る。手元のフライパンを見ると、焦げる一歩手前というところだった。
慌てて火を止めて、皿に盛り付けることなくそのまま食事を始める。食べるのは私だけなのだから、別に盛り付ける必要もない。
「どうですか?私の味は」
正直、味はわからなかった。調味料の味しかしなかった。人間ってこんな味がするんだなぁと、ぼんやり考えながらあっという間に食べ切ってしまった。
「⬛︎⬛︎ちゃんに食べてもらえて、嬉しいです」
まだまだ冷凍庫には彼女の肉が詰まっている。
食べ切るのと捕まるの、どっちが先だろう?なんて彼女と語り合った。
