ナレーター(CV.小堺一機さん):
お砂糖、スパイス、素敵なものをいっぱい。
全部混ぜるとむっちゃ可愛い女の子ができる!はずだった――
だけどユートニウム博士は間違って余計なものも入れちゃった!それは
ケ ミ カ ル X
(爆発音)
ユートニウム博士、爆発で吹き飛ばされ壁にもたれて座りながら絶望の表情。
顔を上げ、何かに気づいて笑顔になる。
ナレーター(CV.小堺一機さん):
そして生まれた超強力3人娘!
スーパーパワーで悪い奴らをやっつける、パワーパフガールズ!(声エコー)
リーダーのブロッサム!
キュートなバブルス!
そしてタフだぜ、バターカップ!
と、これはどこも調べず、己の頭と手だけで諳んじたフレーズ。なにを隠そうアニメ『パワーパフガールス』の冒頭部分であった。いかれたメンバー紹介ののち、シームレスにオープニング曲へと繋がるわけだ。
〽そうは言っても一人だけでは~ We can see what you say
あ、これはちょっとリスニング能力が著しく低いため調べずには書けなかった。
まだ「推し」という単語がこんなにも市民権を得る前、小中学生になった女子たちは大概、各々好きなキャラクタを心に決めていた。大半がディズニー。次点がサンリオ、サンエックス。たれぱんだやこげぱん世代である。
中身のない、それでいて愛情のこもったお手紙を認め後ろの席の子にまわすためのメモ帳、香りつきやラメ入りのノート取りにはあまり役立たなそうなペンたちを収納するポーチ――筆箱ではない、どこまでいってもポーチ――、部活で使うフェイスタオル、先生の前で出すのは無意識に気が引けるおりたたみコームなどなど、キャラクタへの愛情の見せどころだ。家から自転車圏内の商業施設にある雑貨屋に売っている。
あなたの好きなキャラクタは? わたしはそう、パワーパフガールズだった。

分析なぞしたことはもちろんないが、歴代、可愛いと思うキャラクタにはなんとなく共通点がありそうだ。にゃんにゃんにゃんこ、カービィ、ゼロ、スイミー、けんけつちゃん、ヒトモシ、マリオの1upきのこ、ざっそう、Suicaのペンギン、わんこきょうだい、最近アツいのはコスモ星丸。多分シンプルな造形でまあるいのが良いのだと思う。
パワーパフガールスを好きになった理由はそもそもアニメを見ていたのがもう20年くらい前のことでちょっと忘れたが、無駄が削がれた単純な図形の組み合わせなのに3人とも個性が爆発している神がかりキャラデザイン、意外と下衆いアメコミらしいストーリィ、あたりだろうか。スーパーパワーがあるのに幼稚園児――直近カートゥーンネットワークでやっているシリーズは小学生――なので、全然失敗するし全然博士に怒られるのも憎めない。
水曜の夕方から土日朝に放送時間が変わったとあれば毎週早起きして録画もしつつリアタイ視聴し、パワパフノートを作って3人がうまく描けるように猛練習し――おかげで、今でもめっちゃうまく描ける。もう後ろの席の子宛ではないが、ちょっとしたお手紙やメモを書くときに添えると注目してもらえる――、当時決して多くは流通していなかったグッズを探しては買い漁り、幻の劇場版も家族で見に行きガイドブックまで購入し、父親の最初で最後の海外出張が決まったときには本家のコミックス本誌と今でも状態よく取ってあればプレミアがつきそうなPC用ゲームソフトをおねだりした。

20周年のときはパワパフネイルでお祝いした。25周年のときはついに集めてきたグッズを活用してバブルスの痛バッグを作った。水色のバッグがいろいろなところに売っており、推し文化の浸透に感謝したが、なかなか鮮やかな水色は売っておらず昨今のくすみカラーブームにちょっとだけ文句を垂れたものだった。ひょんなことからぬいぐるみも手に入れ、去年ついにぬい旅行も果たした。今年は日本放送25周年なので、なにをしようかしら。グッズ売り場で、アニメも見たことがない、というかアニメがやっていたことすら知らない、「あのタコ持ってる水色の子かわいいよね」と話すティーンエージャに混じり、心中で「いやオクティは百歩譲るとして水色の子て」とツッコミを入れていそうな顔をした奴がレジに並んでいたら、それがわたしである。きっとフロア内で最年長。

職場のおねいさんたちにはちいかわが大人気の令和に、バブルス推しを押し通していたら、新作のガチャガチャが出るたびに誰かしらにまわしてきてもらえるようになり、現在に至る。人生の中で一番オタク期間が長い対象、西尾維新より廃墟より狂気ぶたより遥かにベテランファンぶれる、それがパワパフ。
初出:同人誌ブログ「写真と文」寄稿 2025/03
グッズはこれの1.5倍くらいあります。

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